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Mein kleiner Regenbogen
心に架かる小さな虹の話。
入梅中ひと休み月⑦
電車を待つ間の暇つぶしに買った本ですが、結構良かったです。個人的には。

『プリズムの夏』 関口 尚・作 集英社文庫

主人公の少年植野と今井は高校3年。映画館で出会った陰りのある女性、松下に密かに惹かれてゆく。だがその一方で、二人は妙なブログを発見。やめていく日記と題されたそれは、松下の勤める映画館で上映される映画ばかりあつめた感想ブログの裏に書かれたもの。少年達は、ブログの作者が松下ではないかと疑い始めるが、やめていく日記につづられていたのは、思いがけない内容だった....。
年上の女性に隠された思いと過去。少年という立場で、届きたくても届かないもどかしい思い。将来の夢。切ないようなまぶしいようなひと夏が過ぎてゆきます。


”欝であることをネットで告白する人は沢山いて、それがいつの間にか不幸自慢大会になっている。そんな”自称欝”は腹立たしい”___真にノイローゼとなった父親を持つ今井の叫びが切ない。本当に鬱ならネットで叫ぶ元気すらないはずだ......その気持ちはとても良くわかる。私も周囲の友人も、心がつらいときは、確かに人に呼びかける気力すらなかったから。でも、その考えが正しいか正しくないかは別にして、今井の腹立たしさも、自称欝さん(今井が指すところの”アンアン”さん=松下)の気持ちもわかる気がする。今井が腹立たしいと思うのは、自分と、自分の父親のような人間こそ一番に助けてほしいと悶え、そしてそれが叶わずに危うい心の均衡を保ったままの生活を強いられているから。アンアンが欝の自分をさらすのは、不幸自慢をしたいからということではなく、自分という人間を見てほしい、と切望するから。今井とアンアン、どちらも心のどこかで、自分のつらい気持ちを見てほしい、気づいてほしいと望んでいる。

寂しさのあまり暗い場所へと堕ちてゆくアンアン。男の子の心理として、好きな人には理想の女神であって欲しいと思うものなのでしょうが、現実の松下さんは、寂しさから自傷をしたり、好きでもない男に抱かれたり、植野の理想とはかけ離れています。けれど、問題なのは、そこから先。自分達よりも人生経験の多い年上の女性の心を、どうやったら救うことが出来るだろう。最初は今井に嫉妬していた植野が、物語後半、その気持ちを越えて、二人で松下を助ける為に奔走する姿がいいなあと思いました。
高校生という身分で出来る事は限られているかもしれません。映画の中のようにうまい言葉もかけてあげられない。でも、純粋にその人を思いやって走る事が出来る。そのひたむきさはまだ未成年だからこそ出来るものなのかもしれないと思いました。こういう少年が描かれているのは、何だかほっとしました。

以下、個人的好き部分↓
「たったひとりの人に愛してもらいたいと思うことは、そんなにもかなえられない願いなのだろうか。」

「わたしが存在してもいいとあなたの口から聞きたい。それだけなのです。」

特に後者の方。愛の究極の意味って、これじゃないだろうかと思う。あともう一つ好きな箇所があるのですが、それは物語のラストなので、ここには書きません。
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コメント

こんにちは。同じ本の感想記事を
トラックバックさせていただきました。
この記事にトラックバックいただけたらうれしいです。
お気軽にどうぞ。
[2010/08/10 00:48] URL | 藍色 #- [ 編集 ]


藍色 様:トラックバック有難うございました!私も後日トラックバックさせていただきますね。こびと
[2010/08/10 22:37] URL | こびと #- [ 編集 ]


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[2010/08/10 00:44] 粋な提案